700回大遠忌法会を迎えるにあたって
大本山總持寺貫首
石附周行
相承 ― 大いなる足音が聞こえますか ―
大本山總持寺では、来る令和6年4月に本山開祖・太祖常済大師瑩山紹瑾禅師700回大遠忌奉修法要がつとまります。この大法要は50年に一度めぐり逢える宗門の法定聚会で、この好因縁を感謝し準備を進めているところであります。
瑩山禅師さまは越前(福井県)の出身で、8歳で永平寺に入り得度、徹通義介禅師や宝慶寺の寂円禅師に参学し、後加賀大乗寺の開山となられた徹通禅師に従って法を嗣ぎ、同寺二祖となられています。
あるとき師の徹通禅師が上堂し「平常心(びょうじょうしん)是(こ)れ道(どう)」の話をされ、瑩山禅師が「我(われ)、会(え)せり」と答えられます。師が「どのようにわかったのか」と問われて「黒漆(こくしつ)の崑崙(こんろん)、夜裏(やり)に奔(はし)る(真っ黒な玉が暗闇を走る)」と答えられました。師がさらに「まだだ、さらに言ってみよ」と催促され、瑩山禅師はすかさず「茶(さ)に逢(お)うては茶(さ)を喫(きっ)し、飯(はん)に逢(お)うては飯(はん)を喫(きっ)す」と答えられました。これを聞いた師の徹通禅師は、ほほえみながら瑩山禅師の大悟徹底されたことを印可したのでした。
このように師から弟子に法が伝えられることを「相承(そうじょう)」と言います。お釈迦さまから代々の祖師によって伝えられた仏法が脈々と今日に至るまでの大いなる足音を確認し、現代に生きる仏法を求めていくことを大遠忌のテーマとして掲げています。瑩山禅師は、“平常心”とは喫茶喫飯(きっさきっぱん)、日常茶飯事の平常の心と受けとめています。つまりその時々の場の“心のありよう、受けとめよう”が大切であるとお示しであります。
瑩山禅師700回大遠忌が報恩行として無魔円成されますよう精進してまいります。そして多くの本山参拝の方々をお迎えできますよう準備して参る所存であります。
大本山總持寺副貫首
盛田正孝
本山においては令和6年4月の太祖瑩山禅師700回大遠忌にむけ「相承」という理念を実現するために一丸となって努めております。
私達の曹洞宗を一般的には「伝統佛教」とか「既成佛教」という言い方があります。伝統佛教というならば、その中味は大遠忌の理念。即ち「相承」そのものでございます。相承し来たればこそ伝統佛教。その伝統佛教は「完成された宗教」、「無害化された宗教」とかと言われますが制度化されれば、必ず形式化し形骸化するものです。そこで本山ではそれを克服する為に大遠忌に当たり「相承」を掲げました。
しかし伝統佛教と言う時、その伝統即ち長い歴史を通して培い伝えて来た信仰・思想・学問・芸術等の中心となる精神的なあり方は今に生きてこそ伝統であり、今に生きてないものは伝統とは申せません。長い歴史の中でその時々に栄枯盛衰があり賛否両論有る中で、その尊いものを必死に伝えようとされた方々の努力に思いを致し、改めてその意義を考える時、太祖大師の御誓願がどれだけ自分の事となっているのか、自らの信念となっているのかを、自らに問いながら報恩行に徹してこそ相承であり、伝光であり、大遠忌の眼目と考えております。
この理念を皆様方と共に実現致したく存じますので宜しくお願い申し上げます。
監院
渡辺啓司
皆様におかれましては、平素本山護持のために多大なるご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。
本山では平成25年4月、二祖峨山禅師650回大遠忌(平成27年奉修)と太祖瑩山禅師700回大遠忌(令和6年奉修)とを一体化して、「御両尊大遠忌法会」として修行する旨を広く公表し、物心両面に亘るお力添えのお願いをさせていただきました。
多くの方々からご理解とご協力を頂戴し、また両尊の大遠忌を貫く基本理念を、「相承-大いなる足音がきこえますか」と定め、平成27年には二祖峨山禅師大遠忌を無事に円成することができました。この勝縁に際しては、地元鶴見の方々にも並々ならぬご尽力をいただきました。
また令和元年11月には、本山が能登から横浜鶴見に御移転されたときの最大の功労者である、中興石川素童禅師の百回御遠忌を恙なく勤修いたしました。
更に令和3年4月6日には、平成19年の能登半島地震によって甚大な被害を受けた、大本山總持寺祖院も見事に修復なり落慶法要を厳修し、同年9月12日には同じく祖院において本山開創700年慶讃法要を無事に勤了いたしました。
今に至るまでの数々の大きな成果は、まさに広くご縁につながる方々によるお力の結集の賜物であり、衷心より感謝申し上げます。
来たる令和6年には、愈々太祖瑩山禅師700回大遠忌が奉修されます。大遠忌にあたり、太祖様のご遺徳をなお一層讃え申し上げると共に、未来に向けて相承し布衍していくべき正法の在りようを深く噛みしめる遇い難き勝縁にしていただきたいと願っております。
令和3年9月19日に本山独住第二十五世江川辰三禅師様がご遷化され、新たに独住第二十六世石附周行禅師様がご就任されました。 ご在任10年余に亘った江川禅師様のご功績を、心より讃仰申し上げると共に、石附禅師様のご教導のもと、本山が「一味同心」にしてさらなる興隆と充実に向かっていくことをお誓いいたすものであります。
コロナ禍ほか諸事多難な世相ではありますが、大遠忌法会円成のために全国の皆様からの格別のお力添えをお寄せいただきますよう謹んでお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
大遠忌局長
三村契一
(山梨県光福寺住職)
大本山總持寺の大遠忌は、二祖峨山禅師650回忌(平成27年に奉修)と御開山瑩山禅師700回忌(令和6年)の報恩法会です。
この法会の円成のために、遠忌局を設置して、準備を進めています。平成25年から、全国曹洞宗寺院等、檀信徒、関係者への周知に始まり、令和6年の本法要、その後の整理まで、13年ほどの期間になります。
大遠忌は、曹洞宗の法定聚会として、全寺院参画のもと行ずる法会で、この度、偶々、瑩山禅師と峨山禅師の遠忌ですので、總持寺で修行されます。
主な事業は、貴重な、登録文化財としての伽藍の大改修で、既に、前期の整備は、終了しましたが、締めくくりの文化財保存工事です。大改修は、費用の面から、どうしても大遠忌を機に、実施することになります。仏殿、待鳳館、放光堂などの内、特に仏殿は、実際に、足場を登って、大屋根を至近距離で見ると、高い建築技術に驚き、更に損傷の大きさに驚きます。
(相承~大いなる足音がきこえますか)、まさに、工事は、槌音そのものです。その様子は、總持寺ホームページで、逐次、お知らせ致します。法要行持、教化出版事業などと合わせての、大事業です。
(相承)は、御両尊の禅を、御生涯を、自らの生き方に照らし、次代に相続し、敷衍することを、自己の行履とする、絶好の機会とも言えましょう。
長期間、同じ局員が勤めるのは、大変難しいことですが、法会の大円成に向け、局員一同、精進して参ります。
相承
相承 ー大いなる足音がきこえますかー
瑩山禅師より仏さまの教えを受け継いだ峨山禅師は、總持寺の基礎を築かれました。さらにその教えは、弟子達をはじめ代々の祖師方に受け継がれ広まっていきました。そうした大いなる流れの上に私たちが存在しているのです。私たちは、その教えをさらに未来に向けて伝えていかなければなりません。
大いなる足音とは、峨山禅師や歴代祖師の遺した偉大な足跡や教えはもとよりですが、私たちが伝えるべき未来への足音をも意味します。その足音に耳を澄ますということは、過去に学び、より良き未来を築くことなのです。大遠忌を良縁として、皆様のこころにも“大いなる足音”が響き渡らんことを念願いたします。
相承ロゴとマークについて
御両尊大遠忌を筆頭としての諸法要(大報恩法会)を奉修するに際し、本山、宗門寺院・檀信徒ともどもの同事現成を期して、シンボルマークを制定いたしました。
禅門に連なるものとしてなじみのある「円相」をベースに、大遠忌のテーマ「相承~大いなる足音がきこえますか~」を併せて明示いたしました。「相承」は石附禅師様の御染筆に依ります。また、アルファベットを併記し、若年層も視野に入れたデザインになっております。