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伝道標語
山に逢っては山に棲み、水に逢っては水に棲む。臥するには臥し、起きるには起きる

表題は文字通り「山に逢っては、山を住処とし、水に逢っては水を住処とする。寝るときには寝、起きるときには起きる」という意味です。単に山や水のあるという場所ではなく、誰もが人生で味わうであろう、行く先々の環境の変化にいかな心がけであたるか、が記されています。そして、環境の変化においては、「寝るときには寝、起きるときには起きる」といった日常生活の調いこそが最善の対応となることを教示されているのです。

五則行持も過ぎ、結制半夏(けっせいはんげ ※制中の中日)を迎えた山内では、毎度恒例でもありますが、新到和尚さんたちがそれぞれお師匠さんたちに近況報告の手紙を書く様子が各寮で見受けられます。上山してから初めての便りであり、文中には「元気です」「精進しています」などなるべく心配かけないような文面が多く、痩せ我慢かもしれませんが、それなりに本山の環境に調和してきていることが窺い知れます。

今年は二月中旬から三月下旬にかけ、六十名近い新到和尚さんが全国から参集しました。 各々それまで多少の差はあれど思うままの生活をしていた環境から、修行道場という特殊な環境に飛び込み、最初は本山内の行持を一つ一つ覚えることに精一杯で、不安のなか居心地の悪さを感じたことでしょう。それから一通り覚えることにより、日常の行住坐臥においてひとまず自分の為すことがわかり一息ついている、それが百日間の制中を折り返した半夏での心境と察します。

一息ついた新到和尚さん、これから刻一刻と取り巻く環境が微妙に変わっていくように感じられるはずです。それは、それまで遮二無二順応しようとしてきた心持ちから徐々に慣れ落ち着いた分、それまで見ていた風景も自ずと変わるからです。

過渡期特有の感覚ですが、問題は慣れてきた頃から。私自身も経験がありますが、それまでいた環境にあれこれ思うようになります。「もっと楽になりたい」「息を抜きたい」、反対に「もっと厳しく」「もっと学びたい」などなど、様ざまに注文を付けたくなります。

ただ、環境そのものは上山当時とは変わっておらず、変わったのはあくまで自身の心境です。

そうした心境となった新到和尚さんの様子をとらえ、指導役の役寮さんたちはしっかり釘をさします。例えば小参(※指導役から親しく教えを受ける行持)の際に「脚下照顧」「只管打坐」といった言葉を送ります。要は「今一度、自身の日送りをしっかりみつめ、調いを取り戻しなさい」ということです。

日常の調いこそ大事、ということは、気持ちが揺れ迷える人たちにはなかなか伝わらないもの。

ゆえに先に上山した古参和尚さんたちが範を示すべく、また感染症の影響で浮足立つことなく「臥するには臥し、起きるには起きる」調いの生活をあらわす、変わらぬ本山の日常です。

令和2年6月(本山布教教化部出版室長 蔵重宏昭)

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