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伝道標語
師若し真師に逢て参徹せずんば、今日如何が祖師の正法眼蔵を開明することあらん。

能登半島の付け根に近い羽咋はくい市の山深い場所に永光寺ようこうじ があります。周りには、大きな杉の木が立ち並び、昼間でも幽谷の趣が漂っています。

この寺は、瑩山禅師によって開山されました。禅師が曹洞宗の教えを確立され、日本中に広めようとされた時期に当たります。

永光寺の伽藍の立ち並ぶところからさらに山奥に入ると、五老峰ごろうほうといわれる築山があります。そこには、我が国の曹洞宗の成り立ちで、最も重要な役割を果たされた五人の祖師がたである、如浄にょじょう禅師・道元どうげん禅師・懐弉えじょう禅師・義介ぎかい禅師・瑩山けいざん禅師の所縁のものが納められています。

瑩山禅師は、永光寺で撰述された『洞谷山永光寺尽未来際置文とうこくざんようこうじじんみらいさいおきぶみ 』において、五老峰の重要性と未来永劫に渡って護持していくべき旨を示されています。曹洞宗の歴史の上では、瑩山禅師が五老峰を確立され、曹洞宗の門流を如浄禅師からの一本の流れに統合されたことは、宗門の安定と発展にとって非常に重要な意味を持ったとされます。

実際に永光寺は、瑩山禅師が願われた通り曹洞宗発展の礎となり、その礎は大本山總持寺に受け継がれていくことになるのです。

五老峰の祖師がたのように、それぞれの弟子によって正しい教えが受け継がれていくさまを師資相承といいます。「正師しょうしを得ずんば正法しょうぼうを得ず」という禅の言葉がありますが、弟子が本当の師に巡り逢えなければ、また師が本当の弟子に巡り逢えなければ正しい教えが伝わることはありません。

来る令和六年、本山は御開山瑩山禅師七〇〇回大遠忌の法縁を迎えます。この大遠忌のテーマは「相承」です。本山にご縁のある私たちは、五老峰の祖師がたが体現された「相承」の意味を知らなければならないのです。

ところで表題の言葉は、瑩山禅師が『伝光録』に示された言葉です。私なりに解釈すると、その意味は「私が古の正師として仰ぐ道元禅師が、もし真の正師である如浄禅師に出逢って、師のもとに参じ修行に徹することがなかったならば、今日どうしてお釈迦さまから祖師がたに師資相承されてきた仏法(正法眼蔵)を開明することができようか」となります。

道元禅師は、語録の中で如浄禅師との出会いを「私が心から逢いたかったまさにその人に逢うことができた」と懐述されておられます。道元禅師は二十四歳の時に正法を求めて中国に渡っておられますが、いつまでたっても正師に出逢えず諦めかけていた折、天童寺にて如浄禅師に逢うことができました。禅師の感激もひとしおで、感涙が止まらなかったと記述されておられます。その鮮烈な想いは「我逢人がほうじん」という言葉とともに今日に伝えられています。

ちなみに、この九月十四日は、昨年ご遷化せんげされた江川辰三しんざん禅師の荼毘式禮だびしきれい(本葬儀式)が厳修されます。ご生前禅師さまは「我逢人」を座右の銘としておられ、日々の人との出逢いをことさら大切にされておりました。

昨今、世の中では人類の命と心の安寧を脅かす様々な出来事が続いています。このような時代にこそ、私たちは悠久の時を経て受け継がれてきた、尊い智慧である仏教を学び、深く自分を見つめなおして、より良き人生の師に出逢いたいものです。

令和4年9月(放光堂司ほうこうどうす 花和 浩明こうめい

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