本年5月12日に「總持寺世界禅Challenge」が大祖堂で行われました。この催しは、總持寺御開山 太祖瑩山禅師七〇〇回大遠忌の特別企画の一環として昨年来実施されています。總持寺と曹洞宗の各僧堂をオンラインで結んでの同時坐禅会とも言えるものでした。
昨年の10月5日に、能登の總持寺祖院と合同開催されたのを皮切りに、5月5日の大本山永平寺との合同開催に至るまで、国内7か所の僧堂と總持寺を結んでの「禅Challenge」となりました。5月12日には、これまでの集大成として、国内8か所、海外四か所の曹洞宗僧堂を同時に結んでの「禅Challenge」となりました。まさに「世界禅Challenge」というにふさわしい大規模な合同坐禅会でした。
千畳敷の大祖堂内には、数多くの機材が並び、また巨大なスクリーンが2か所に配置されていました。スクリーンには、かわるがわる国内外の僧堂のライブ映像が映し出されます。それぞれの国や地域の僧堂にはそれぞれの特色があり、堂内の香さえも伝わってくるような臨場感のある映像と音声が流れていました。
当日の大祖堂には、小さなお子様からお年寄りまで700人ほどの参加者が集まり、堂内いっぱいに整然と並べられた坐蒲を使って一斉に坐禅を行いました。しんと静まり返った大祖堂、スクリーンに映し出された国内外各僧堂の坐禅の様子。私は、進行する役を承っていましたが、一緒に坐ってみるとこころが世界中に広がっていくような不思議な感覚をおぼえました。
今回の模様は、YouTubeでも同時配信され、より多くの人がこのイベントに参加できる試みも行われました。おそらく今回の企画は、長い禅の歴史の中でも世界初の試みだったのではないかと思います。私は、この催しに参加し、「今はこういうこともできる時代になったんだ」と素直に感動いたしました。また同時に、禅が言葉や国境を越えて、世界中に広がっていることを実感いたしました。
表題のお言葉は、瑩山禅師が撰述された『坐禅用心記』の冒頭の一節です。『坐禅用心記』は、道元禅師が撰述された『普勧坐禅儀』とともに曹洞禅の重要な指南書とされています。意味は「坐禅は、この我が身をもって、ありのままの真実を明らかにし、我々を本来の姿である仏の姿たらしめてくれる」と私は理解します。お釈迦さまは2500年前、八万四千の法門といわれる多くの言説をこの世に残されました。その多くが仏教経典として今日に伝わっています。しかし、お釈迦さまの真意は一つでも、その解釈は様々に展開し今日に伝わっています。一方坐禅によって示されたお釈迦さまのお姿そのものは、2500年変わりようがなくそのまま今日に伝わっています。今回、大祖堂で皆が行じた姿は、「お釈迦さまが行じた姿そのものであった」に違いありません。瑩山禅師は表題のお言葉によって、そのことを私たちにお示しになられたのだと思います。
お膝元である大祖堂から、世界中に伝えられた現代の「禅の姿」を見守られておられた瑩山禅師は、果たして何を思われたことでしょう。